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奧田 夏樹 さん | ||
50万円 |
2004年12月の助成申込書から
本研究では、西表島におけるガイドツアー事業者による地域利用実態の把握、およびガイドツアープログラムの専門性の検証を、野外調査、ガイドツアーへの参加、および聞き取りによって実施した。
またより広く、観光に関連する地域の現状把握を行なった。
さらに、自然体験型ガイドツアー(含エコツアー)が地域生態系に与える影響について、より科学的な検出をおこなうことを試みた。
重点調査地域は、西表島北西部の船浦湾に開口する、マーレー川、ヒナイ川および西田川流域とした。
当該地域は自然体験型ガイドツアーによる利用が現在島内で最も高い地域である。
ガイドツアーブーム以前、あるいは初期にあたる1990年代初期の時点では、自然体験型ツアーのガイド業を営んでいる個人事業主・団体は、西表島全島でも10未満程度で、しかもガイド業だけで生計を立てられる例は皆無に近かったのではないか、という証言が複数の当時を知る人々から得られている。
同様に、カヌーレンタル業についても当時は黎明期で、その大部分は民宿などが副業的に行なう程度に限定されていたとのことである。
即ち、この当時ピナイサーラの滝を間近に見ることを目指す入域者は、徒歩、あるいはカヌーをレンタルした上で、ガイド(道案内)なしで向かうのが通例であったことも判明した。
さらに現地調査からは、こうした歴史を持つ当該流域で、自然環境保全上、速やかな対応が求められる問題(水域への飛び込み、樹木の傷害、カヌーによる河岸浸食、無許可の施設整備による影響)の検出にも成功した。
またこれらの問題を認識する上では、生物学的視点からの調査に止まらず、インタビューなども含めた学際的手法が極めて有効であることが明らかとなった。
本研究から得られた知見から、西表島はもちろん、これからの日本において、自然と人間との関係のありかたはどのようであるべきか。
そのなかで自然体験型ガイドツアー(エコツーリズム)はどのような役割を果たしうるかについて議論した。
【 この助成先は、2006年度にも同様のテーマで助成を受けています → 2006年度の助成事例 】
中間報告から
沖縄県ではここ数年,毎年のように観光客数の更新と,さらなる増加を目指す社会的動きが見られます。こうした傾向は,一見,喜ばしいことのようにも感じられますが,利用資源が有限であったり,傷みやすいものである場合,その産業は持続的ではなく,消耗的に資源を食いつぶし,やがては産業自体が立ちゆかなる可能性があります。こうした産業で必要なことは,自由競争ではなく管理と利用制限の論理であることは数学的にも証明されています。
自然豊かな観光地の多くでは,エコツーリズムをはじめとする自然体験型観光が近年急速に導入されつつありますが,例外なく,持続可能性を保証するシステム(利用地域・入域者数の制限など)を予め整備することなく行なわれているので,自然に優しいイメージとは逆に,自然環境破壊の新たな要因となりつつあります。
西表島でもここ数年,エコツーリズムによる自然破壊が進行しつつあり,すでに,稀少な魚類や貝類が見られなくなった場所も確認されています。そこで,こうした自然体験型観光が自然環境に及ぼす影響の調査を2005年8月末より開始しました。この調査では,西表島内での,自然体験型観光の利用地域の把握と現地踏破による人為的影響の確認,生態系への影響調査の適地選定を行ないました。
またこの問題は,利用する人間側への新たな自然観の啓蒙が必要であるため,行政・事業者・利用者の意識の把握と,本当に持続可能な自然体験型観光の可能性についての提言を,随時行なった。
調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項
当初,野外調査は6月から開始する予定であったが,7月22日に那覇地裁で行なわれた,西表リゾート開発差止訴訟の原告側証人としての準備のため,高木基金事務局とも相談の上,開始時期を9月に変更させていただきました。