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地域分断の阻止と文献調査拒否を勝ち取った長崎県対馬市の住民運動の研究



グループ名 原子力資料情報室
代表者氏名 高野 聡 さん
URL https://cnic.jp/
助成金額 40万円

研究の概要

2024年5月の助成申込書から
 本研究は2023年に文献調査応募に揺れた長崎県対馬市における住民運動を扱います。具体的には、住民運動を担った住民へのインタビューを通して、対馬市長による調査受け入れ拒否を勝ち取った住民運動の実態を明らかにします。その際、3つの点を明らかにしたいと思っています。  第一に、住民運動の戦略です。地域の合意形成を軽視した文献調査推進により、住民間で地域分断の危機に陥りました。そんな中、対馬の住民運動には、明確に反対を掲げながらも分断を悪化させないことも考慮したグループや、あえて調査の賛否を明らかにせず住民間の対話を重視したグループなどが存在しました。住民運動の様々なフレーミングや戦略を把握したいと思います。  第二に、住民主体の町づくりへの考えと実践です。文献調査応募を推進した住民グループは交付金による地域経済の復興を画策しました。それに対抗する形で真の住民自治を模索した運動の一側面を明らかにしたいと思います。  第三に、地層処分事業者の原子力発電環境整備機構(NUMO)による対馬住民への懐柔工作です。この間、NUMOによる地層処分関連施設への視察旅行や戸別訪問による説得など、透明で公正な議論による意思決定を阻害するような工作があったという証言が住民から出ています。地域で文献調査の受け入れを狙うNUMOが住民に対し、具体的に水面下でどのような働きかけを行っているのか解明します。  第四に現在の文献調査推進の方法に対する改善策です。NUMOによる懐柔工作を跳ね返し、調査受け入れ拒否を勝ち取った住民は、経済産業省やNUMOに対して最終処分政策の改善を望んでいることが予想されます。運動の中で住民が経験した調査推進の問題点とそれに対する改善策を提示することを目指します。

中間報告

2024年の中間報告から
 この研究は2023年に核ごみの文献調査応募に揺れた長崎県対馬市において、対馬市長による調査受け入れ拒否を導いた住民運動の実態を明らかにするものです。11月19日から26日にかけて住民運動を担った住民17人にインタビューを実施し、特に、4つの観点から分析を行いました。  第一に、地域分断の拡大に配慮しつつ、反対運動の拡大に成功した戦略についてです。対馬には以前から粘り強い話し合いにより住民の合意形成を目指す「寄り合い」の文化があります。宮本常一著「忘れられた日本人」にも言及されています。反対の住民団体「核のごみと対馬を考える会」(以下、対馬を考える会)は、反対署名運動の際に、対馬の文化でありアイデンティティである寄り合いを再興しようと反対署名の際に住民に呼びかけました。地域社会に貢献し、信頼のある人が署名運動の中心となり、丁寧に話し合うことで署名が広がっていきました。  第二に、核ごみの交付金に頼らない住民主体の町づくりへの考えと実践です。対馬を考える会は、対馬市内外の企業、団体で構成される「島の海と陸を豊かにする会」が提示した再生可能エネルギーの地産地消や持続可能な地場産業の育成ビジョンを住民と共有することを目指しました。単なる調査反対の訴えではなく、未来への期待感や共感、納得を得ながら運動が拡大していきました。  第三に、地層処分事業者の原子力発電環境整備機構(NUMO)による対馬住民への懐柔工作です。一番目立ったのは、NUMOが大部分の費用を負担して、視察旅行と称して青森県六ヶ所村や北海道幌延町の核ごみ関連施設へ住民を連れて行くやり方です。延べ人数で400人以上の住民が視察旅行に行ったのではという証言もありました。NUMOからではなく、一度視察旅行に行った住民が他の住民を誘うと従来からの人間関係により断りにくく、参加が拡大していき、推進の考えもある程度広まっていった過程が確認できました。  第四に、現在の文献調査推進の方法に対する改善策です。多くの住民に共通していたのは、地層処分に関する賛成/反対の科学的議論を通じた推進ではなく、交付金で住民を幻惑し、視察旅行と称した接待で住民を懐柔するやり方への憤りでした。国やNUMOが掲げる「調査実施地域に敬意と感謝を国民に共有してもらう」というロジックは、狡猾な金銭的便宜供与の実態をごまかすための方便でしかなく、それが住民の不信を強めていました。交付金の付与はやめるべきだという意見が多数でした。

結果・成果


その他/備考


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