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外環振動・低周波音調査会 | |
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上田 昌文 さん | |
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http://www.shiminkagaku.org/ | |
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50万円 |
2024年5月の助成申込書から
2020年10月18日に調布市で起こった東京外環道トンネル工事に伴う陥没事故を機に、周辺地域では被害と補償をめぐって、さらにはトンネル工事の継続や地盤改良工事の実施の可否やそのリスクをめぐって、事業者(国土交通省、NEXCO東日本、NEXCO中日本)が、これまでに住民が納得できる調査や情報提供を行ってこなかったことからくる様々な問題が噴出しています。2021年及び2022年の高木基金の助成を受けて、市民科学研究室が被害者住民らと共同で「外環振動・低周波音調査会」を立ち上げ、地盤・地質、振動・騒音、そして環境センシングの分野の専門家の協力を取り付けつつ、振動・低周波音による健康被害(2021年12月11日に報告会)ならびに建物損壊(2022年7月に第一次、2023年5月に第二次報告会)の実態調査を実施しました。これらと並行して、地下工事から発生する振動を常時モニタリングする必要を痛感し、簡易な振動計(既存の振動加速度センサーのアプリケーションを改良して中古iPhoneに装備したもの)を用いてデータを自動記録するシステムを開発し、シールドマシンによる掘進が進行・再開されているエリア(外環道の練馬、三鷹、世田谷エリア、横浜環状南線エリア、リニア中央新幹線エリア)で計測を続けています。さらに、調布エリアで2023年夏から開始された地盤改良工事、ならびに、上記各エリアでの地下掘進での、振動・騒音・低周波音に起因する種々の被害を、各エリアの住民と連携しつつ未然に防ぐために、事業者へ種々の質問状の提出と直接交渉、地元での学習会や見学会の実施を重ねています。これまで3年間に蓄積した地盤や工法やモニタリングなどに関する知見と本調査で示した市民科学的手法を、広く全国の住民に提供するために、最新の情報を提供するウェブサイトを構築し、問題の全体を概説する書籍を刊行します。
2024年の中間報告から
2020年10月18日に調布市で起こった、外環道トンネル工事に伴って発生した陥没事故では、トンネル直上及びその周辺地域において、住民の間に騒音・振動・低周波音による健康被害が生じ、また建物にも様々な損壊が生じていることが、本基金の第20期並びに第21期の助成を受けての調査で明らかになりました(※)。※詳細は:https://www.shiminkagaku.org/csinnewsletter_072_202309_ueda/
地元住民と市民科学研究室とが「外環振動・低周波音調査会」を結成し、毎月 3 回ほどの定例会を持ちながら、2021年8月以来、現地での調査を続けています。20期では、25名の被害住民に対して詳細な聞き取り調査を実施し、その深刻な健康被害の実態を明らかにした。また21期では、調布市若葉町1丁目、東つつじケ丘2丁目、東つつじケ丘3丁目、入間町から世田谷区成城にいたる、トンネル直上エリアとその周辺の合計333軒を対象に建物調査を実施し、工事前にはなかった損傷が工事後に発生したと確定できた事例30軒、工事によると強く疑われる地面の沈下・隆起の影響が出ていると判定できる事例が30軒あることが(これらのうちには、事業者が恣意的に定めた「補償対象エリア」の範囲外にある家屋がそれぞれ9軒、16軒含まれていることも)判明しまし。
22期からは、こうした被害が地下でのいかなる稼働状況に由来するものかを特定すべく、また、被害を未然に防ぐ対策の具体化に向けて、練馬区や三鷹市などの外環道エリア、横浜環状南線エリア、そしてリニア中央新幹線エリアを含む広い範囲を対象に、自ら開発したiPhone振動計(開発したアプリを入れて家屋内で発生する1週間の振動を詳細に記録できる)による振動モニタリングのネットワークを拡大しています。
22期から23期にかけてのもう一つの焦点は、調布市陥没エリアで2023年8月から開始された大規模で長期間の「地盤改良工事」です。高圧噴射撹拌工法との関連が強く疑われる、入間川(東つつじケ丘2丁目付近)での気泡発生という事象は、その後、リニア品川工区の目黒川、そしてリニア町田小野路町工区での調査掘進現場の地表面からも起きています。また、「気泡シールド」ではない「泥土シールド」という工法を使っていたとはいえ、2024年9月に広島市西区で発生した大規模な道路陥没事故も、シールド工法が掘進中に出くわす軟弱地盤を十分に予測し対処できないこと示しており、調布エリアとの共通性が浮き彫りになっています。事業者側からの原因究明や環境影響調査の不十分さはもとより、シールド工法自体の問題点をも、種々の専門家の協力を得ながら明らかにし、振動、騒音、地表変状、気泡発生、水質変化などのデータを取りつつ、それらを総合して種々の被害を未然に防ぐことを目指しています。そのために住民自身による学習、測定、申し入れや交渉などを多面的に展開しています。