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原田 浩二 さん | |
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http://plaza.umin.ac.jp/khh/index.htm | |
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50万円 |
2024年5月の助成申込書から
フッ素原子を含む有機化合物のうち、難分解性を示すフッ素化アルキル化合物PFASによる環境汚染、ヒト曝露について近年、注目が高まっています。泡消火剤の使用があった在日米軍基地、自衛隊、空港周辺地域、またフッ素樹脂製造工場の近隣で地下水汚染を引き起こし、その結果、飲料水や農作物の汚染から地域住民の人体へ蓄積が見られており、健康リスクが示唆される濃度で検出されています。沖縄県、東京都多摩地域、大阪府摂津市が代表的な事例です。しかしながら、まだ上記の地域においてしか血液検査などは実施されていません。PFASは全国的に使用されてきており、汚染の実態が明らかにされていない地域が数多く残されています。地域ごとで汚染の原因、状況は多彩であり、広域での定点観測では汚染を同定することは困難であり、地域で生活する市民の視点での調査が求められています。
PFASの化学分析は一定の方法が確立してきていますが、実施できる機関は限られており、営利検査機関への委託費用も1件数万円以上と高額です。市民自らPFASの実態を明らかにするためにはPFAS分析を低廉で行うことができる機関を増やすことです。申請者は従来の液体クロマトグラフィー質量分析計による方法に代わり、汎用のガスクロマトグラフィー質量分析計でもPFAS分析が実施できることを発表しており、この方法で簡便、低廉に分析ができることを示しています。この調査研究では市民が主導するPFAS汚染が懸念される地域での血液検査、水質検査を支援し、また営利を目的としない機関へのPFAS分析法の技術移転を進め、国内のネットワークで調査、分析の経験を共有する仕組みを目指します。
2024年の中間報告から
既に知られているPFAS汚染地域のほか、直近で水道水のPFAS汚染が発覚した地域での調査を行うことを計画しました。京都府綾部市、神奈川県相模原市・座間市、熊本県熊本市では廃棄物処分場、基地などに隣接し、地下水源の汚染を受けており、住民のPFAS曝露が懸念されています。
綾部市の汚染サイトの近傍で土壌、水質の調査を実施し、従来のPFOS、PFOA以外のPFASの測定を行っています。隣の福知山市でも水道、河川からPFASが検出されたところ、上流の廃棄物処分場からの放流水からの汚染を特定しました。PFHxAといった代替PFASも検出されました。神奈川県では昨年から続いて道保川でのPFOS濃度が指針値を超える状況でした。専用水道を備える集合住宅でも目標値を超えるPFOS・PFOAが検出され、地下水汚染が一時的なものではなく、残留していることが確認されました。熊本県熊本市では河川や地下水での検出がこれまでされていましたが、発生源の特定が進んでいません。地上部での調査を市民団体と行い、水路や土壌でPFASを検出し、その組成からも地下水、河川と由来が同じと考えられました。
このほか、岡山県吉備中央町や岐阜県各務原市での環境調査、血液検査に協力を行っています。
ガスクロマトグラフィーによるPFAS分析法の論文作成について名桜大学の田代教授に協力し、国際学術雑誌に掲載されました。