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アンパルの自然を守る会 | |
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井上 志保里 さん | |
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https://www.facebook.com/anparu.org/?locale=ja_JP | |
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50万円 |
2024年5月の助成申込書から
与那国島は日本最西端に位置する国境の島で、最も近い西表島からも83km離れており、渡り鳥の経由地であり、固有種が多く生息する独自の生態系を有します。その中でも比川集落にある樽舞湿原は沖縄県に残されている最大級の湿地帯であり、「生物多様性の観点から重要度の高い湿地500」に選定されています。
しかし、樽舞湿原は与那国町が政府に提出した「比川港湾」計画による開発の危機にあります。この計画は軍事利用を前提としており、地域の市民は、開発によるこの湿地の消失を危惧しています。
与那国島のアクセスの困難さから、樽舞湿原についての具体的な調査はほとんど行われておらず、特に水生昆虫や淡水魚に関する情報はほとんどありません。そのため、地域の市民による調査が重要であり、これを通じて研究者の関心を喚起する必要があります。
樽舞湿原の開発が迫る中、生態系の基礎データや動物の調査報告が不足しています。調査研究の手法として、地形や水質の基礎データの収集や、生物調査を通じて固有種の発見を目指します。
調査研究の目的は、専門家が樽舞湿原を調査地として関心を持つためのデータを獲得することです。基礎データの収集と新種・固有種が存在する可能性を通じて、湿地の保全と生物多様性の維持を目指します。
2024年の中間報告から
日本の最西端、沖縄県与那国島にある樽舞湿原は、琉球列島に残された淡水湿原として最大規模となります。ここは元々田んぼとして使用された後、数十年前に耕作放棄地となり、湿原として残されている状況です。与那国島はただでさえアクセスが難しいうえに、舞湿につながる一般道は残されておらず、且つ民有地が多く含まれることからアクセスが難しいのです。この場所は素晴らしい生態系があるにもかかわらず、観光にも使われず、研究も進んでいません。
私たちアンパルの自然を守る会は、普段は与那国島から東に150km離れた石垣島で、日本最南のラムサール条約湿地、名蔵アンパルで観察会を行ったり、島の生物調査を行ったりしています。石垣島では、多くの淡水湿地はすでに田畑へと開発が進んでしまい、大規模な湿地は残っていません。そんな中、八重山の貴重な淡水湿地、樽舞湿原を軍港開発する計画がニュースで飛び込んできました。このままでは貴重な生態系が奪われてしまう、そう感じた私たちは、まずこの樽舞湿原の生態系調査が必要だと考え、このプロジェクトを立ち上げました。
2024年5月から与那国島の方とWebミーティングを定期的に行い、ヒアリングを行いました。同時に「与那国島の自然と共に生きる会」の立ち上げをサポートし、2024年9月設立総会に合わせて現地調査を行いました。まず、樽舞湿原で調査をできるように与那国島のメンバーに紹介してもらい、地主さんと交渉し、快諾いただいた上で藪を切り開きルートを開拓しました。途中に石灰岩の切り開いた崖があり、両手を空けた状態でないと進むことができません。当初考えていた捕獲機の輸送やボートを持ち込んでの調査は難しいことが分かりました。水生昆虫では特別希少種は確認されませんでしたが、多くの鳥が行きかい、生物多様性が高いことが分かりました。また、ヒアリングで、鳥がドロクイのような魚を捕食していたことが分かり、魚類の調査が求められることが分かりました。植物担当が見られる植物を確認しました。特別に希少な植物は確認されなかったのですが、調査として見ることが出来たのはあくまで湿地内であり、湿地を囲む斜面部ではランの仲間などで希少種が期待されることが分かりました。2024年10月に、改めて水生昆虫の担当がサンプルをとりに行きました。トビイロゲンゴロウが確認され、水生昆虫にとって重要な場所であることが示唆されました。
また、WWF・軟体動物多様性学会と情報交換を進め、貝類が重要である可能性が分かり、当プロジェクトの項目に追加を計画しています。2024年12月にはWWF・軟体動物多様性学会から樽舞湿原の開発について声名が出され、今後もこの場所での調査の必要性が注目されました。