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日野 行介 さん | |
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50万円 |
2024年5月の助成申込書から
東京電力福島第一事故での避難の混乱を受けて、政府は原発30?圏内の自治体に避難計画の策定を求める方針に転換しました。1か所の対象人口は数十万人(最多は日本原子力発電東海第二原発の92万人)と膨大で、計画の実効性に対しては「絵に描いた餅」「机上の空論」と、当初から国民の疑いの目が向けられてきました。
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、北陸電力志賀原発30?圏内で多数の家屋が倒壊し、道路は崩落。モニタリングポストは通信が途絶えました。UPZ(5?30?圏)の屋内退避、自家用車による避難、実測値に基づく判断――という、原子力規制委員会が定めた原発避難計画の基本原則が複合災害(地震など自然災害による原発事故)では機能しない現実を示しました。それでも規制委は改める姿勢を見せません。原発避難計画が木片を組み上げたジェンガタワーのようなもので、少し動かすと全てが崩れる?虚構?であり、安全審査の対象外のため策定プロセスがブラックボックスで基本的な資料さえ公表されておらず、技術的な検証は無いに等しいためです。つまり政府は「変えられない」し、「変えなくても済む」のです。そんな無意味な計画を作らせる理由は、事故によって停止した原発の再稼働を正当化する以外にはありません。
長年の原発調査報道で培った情報公開請求の技術によって、事故直後までさかのぼって国と自治体による非公開の会議や調査などの公文書を入手し、壮大な虚構の詳細および全容と、隠された政府の真意を立証します。入手した公文書は住民訴訟の原告団などに提供するとともに、整理して書籍化し、広く一般に伝えます。
2024年の中間報告から
2023年度に引き続き、国と自治体の非公開協議を記録した公文書に狙いを定めて情報公開請求を継続しました。23年度の請求で国と関係道府県の担当者が年3回集まる「道府県原子力防災担当者連絡会議」の存在が判明しました。2024年10月に前回の請求後に開催された3回の会合の配布資料を内閣府に、会議のやり取りを記した復命書を茨城県と静岡県に請求したところ、内閣府からは23年度にあった2回分の配布資料だけが開示されたのに、両県からは24年6月26日に実施された会合の復命書が開示されました。24年度から会議名が「原子力防災実務担当者連絡会」に変更されてました。目的は配布資料の開示を回避し、議事録の未作成を正当化する以外にありません。
国がプロセスを隠す理由は、欠落や矛盾が露呈するのを避けるためです。規制委は、22年7月に原子力災害対策指針を改定しました。事故時に避難者を搬送するバス運転手らの「防災業務関係者」について、「放射線防護業務従事者などの線量限度を参考に所属組織が指標を定める」としました。つまり「会社が決めれば50mSvや100mSvまで被ばくはOK」としたのですが、そもそもバス運転手は民間人なので法令上の被ばく限度は1mSv。それでは避難計画が成り立たないため、企業と運転手の「自己責任」で1mSv超の被曝を求めたわけです。規制庁が改定に先立ち行った意見照会に対して、関係省庁や道府県は「1mSvで協定締結済み」「矛盾している」など反対しましたが、規制委は改定を強行しました。このように原発政策に潜む矛盾と欠落は、行政プロセスの公文書開示によって特定できます。現在は原発避難計画の全容を解明する書籍の執筆をしています。